ほぼ足りてまだ欲 その先

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幼なじみ

 昨日の午後、久しぶりに幼なじみがついそこまで仕事できたと電話を寄越したので合流。先年他界した奴のおやじにそっくりになってきて思わず笑う。なにしろ頭の髪の後退具合まで同じなのだ。尤もこっちだって顎の腫れ具合から髪の毛のなくなり具合まで同じだから人のことをいえた義理じゃない。呑みながら昔話で突っ走る。ところが、やつはあんまり覚えていないのだ。私たちはガキの頃お互いの家をあっち行ったり、こっち行ったり泊まったりしていた。だから彼が住んでいたおやじの会社の社宅のことも私は良く知っていた。それなのに彼はあんまり覚えていないのだ。「いやぁ、実はあの頃、おふくろにも話してはいないんだけれど、ひっくり返って頭を打ったことがあって、そのせいかあの頃の記憶が欠落しているんだよ」とまでいうのだ。そんなわけねぇだろう。
 実は彼は私より2歳下で彼の兄貴が私と同じ歳だった。しかし、その兄貴が丁度10年前に急死している。私は当時日本にいなかったので、彼の葬式に参列していない。とにかく急死だったと聞いているがどんな急死だったのか知らなかった。彼の話によると脳の硬膜からカビが侵入して脳がやられ、10日ほどで植物人間になってそのままだったのだそうだ。体力が落ちているとその侵入したカビを除去する力が落ちてしまうのだそうだ。多分周りの人間は正確に理解できていなかったのかも知れない。
 奴も私も奴の兄貴もみんなして中学から高校まで同じ英語の塾に行っていた。私はもう英語を追いかけるので精一杯だったが、彼はそれに加えてその英語の先生の娘に数学を習っていたのだそうだ。どうしてそんなのが続いたんだと聞いたら、その娘が美人だったんだというのだ。中学生でそんなことをあいつは考えていたのかと驚いた。同級生の女子に対してはそういう意識はあったのだけれども、奴はそんな歳上を意識していたのである。なんつう奴だ。
 最後は浅草の神谷バーに行った。私はあそこはいつ行っても混んでいて、ワァワァしているから行きたくないのだけれど、奴が久しぶりにいって見ようよというので、じゃ電気ブラン一杯だけだよ、といってはいる。チェイサーにビールを頼んで二人で6人掛けの端っこに相席させて貰って電気ブランを舐めながらまた昔話。当時、近所のガキ仲間を片っ端から話題にする。奴が修士をおえていたのは知っていたけれど、論文でドクターになっていたことは今日の今日まで知らなかった。ある民間研究所から私学の教員になった時にどっと年収が下がったんだよと云う話を聞いていやいや、大変だなぁとまた酒をあおる。神谷バーの面白さはやたらとあちこちで相席になった全く世代の違う大人たちが平気で交流していることだ。30代とおぼしき男二人がウクレレを取りだして向かいのおばさんと80代のお爺さんに弾いて聴かせていたりする。多分あの男たちは地元の人間じゃないだろう。それでも肩の力が降りていて心の鎧も脱ぎ捨てているのが面白い。