昨日のNHKスペシャル「堕ちた特捜検察〜エリート検事 逮捕の激震〜」は江川紹子の存在感を確認するための番組だった。生放送で、一緒に議論のテーブルに着いたのは元東京地検特捜部長の熊崎勝彦と足利事件の弁護士・佐藤博史。当初は立花隆もこのテーブルに着くという情報があったけれど、実現しなかった。番組は村木事件に於ける前田恒彦主任検事がどんな人間で、この証拠改ざんがどの様に行われたかに焦点があるような作りだった。ここがまずピントがずれていた。かつての広島大学での恩師を登場させて厳しいまでの正義感であったとまで発言させている。
他のテレビ局でも元東京地検特捜部長の宗像紀夫や、元特捜検事で東京地検公安部長だった若狹勝が登場してこの事件を語るときは概ね、「はなはだ許せない行為で、OBとして憤懣やるかたない」という主張をするが、この番組での熊崎はまさにその路線でしかない。つまり彼等は今回のような不祥事は全くあり得ないことで、あってはならず、前田某は怪しからん奴だ、という表現に終始するのである。
そこにあって、江川紹子は飽くまでも今回のケースがたまたまばれてしまっただけであって、特捜を含めた検察のこれまでのあり方そのものをリビューするべきなんだと指摘した。彼女は全くぶれていない。この番組で彼女の評価は再確認されたと云って良いだろう。
小沢一郎・陸山会事件、元福島県知事・佐藤栄佐久事件、鈴木宗男事件はもちろんのこと、ひょっとするとリクルート事件、ロッキード事件まで遡って検証し治すということが必要なのではないだろうかという気にいよいよなってきた。
江川紹子を元東映フライヤーズの張本勲如きの面子のために番組から降ろしたTBSはお恥ずかしい限りである。
彼女のスタンスを明白に語っている「勇気ってなんだろう」(岩波ジュニア新書)はお奨め。
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