ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

元気な街

 昨日は昔から商店街を見に行くのが面白いといわれていた十条に足を伸ばした。一度いって見たいと思っていた。高円寺や吉祥寺も随分人がたくさん歩いていて、面白いとはいわれるけれど、十条はまた違っているだろうと。
 行動半径が狭くなってからというもの、理由がなくてはどこも出掛けなくなってしまっているから、なかなか足を伸ばすことがない。昨日はとにかく昼飯をどこかで洋食を食いたいなぁと思っていたのだけれど、なかなかどこといって思いつくところもなく、近場は高い。安いところはまずいという至極自由主義経済に乗っ取った状況になっているものだから、このあたりでなにか起死回生と行きたいところだ。
 先日、twitterで在米の方が下田の大てんこ盛り洋食屋の噂をしていたので検索したらまだまだ健在と出ていたけれど、さすがに下田じゃ、ちょっと足を伸ばすというわけにはいかないから、近場を捜すと、赤羽線の十条にちょっと変わった洋食屋がありそうだったので、それもあってその気になった。
 京浜東北線に乗って東十条に出た。地図(といってもGoogleだ)を見たら王子寄りの南口を出て歩いたら赤羽線にあたり、そこは十条だとある。頭の中では(今時そんなわけがない)踏切のつもりだったけれど、行ってみたら階段を上がった先が跨線橋である。鶯谷から日暮里、田端、上中里、王子と段々の縁を走ってきてここも同じように段丘の下に駅がある。
 細い一車線の道をあがるとまるで突き当たりのように見えるけれど、良く見ると商店街のゲートがあって、その中はまるで温泉町の土産物屋でも並んでいるかのような商店街だ。揃いのフラッグのようなものが下がっていて、良く見ると「演芸場通り」と書いてある。この辺はきっとそんなに昔に遡らなくても畑だったんじゃないだろうか。道は入り組んでいて、一歩中に入ったら、どこに出てくるのか、楽しみが増えそうだ。演芸場とははて、なんだろうと思うまもなくその演芸場が建っている。これが前にもどこかで聞いたことがある「篠原演芸場」だ。もちろん演目はいわゆる大衆演劇。昼夜公演。大人1500円は寄席より安い。外まで音が漏れてくる。
 東十条の駅から十条の駅までは500m位しか離れていないから、きょろきょろ歩いているうちに、それも唐突に駅の直ぐ脇の、あたかもプラットフォームにそのまま上がってしまうことができそうなところにある踏切にくる。これを渡ってまっすぐ行くと、入り組んでいる十条銀座の一角に合流する。
 私はひとまず駅前にいっておこうと、まるでどこか地方の、それも20-30年ほど昔のロータリーのような駅前に出る。ローマ字で駅名が表記されているのはどうしてなんだろう。それだけ外国人人口率が高いとでもいうのだろうか。雰囲気としては夏に行った蕨に似ていないこともないが、あっちの方がマンション率が高いかもしれない。
 駅前から十条銀座に入ると結構なにぎわいなのは、この駅を利用する学校の数が圧倒的に多いからなんだろうか。それにしてもどんどん進んでも人は減らないし、ずっと先まで続いているように見える。直ぐに左へ入る西通りのアーケードがあるからそっちに曲がるやいなや、とても魅力的な店を見付けてしまう。見れば見るほど涎が出ちゃいそうな惣菜がぎっしりと並んでいる。鯵のフライが60円と書いてある隣にピーマンの肉詰め、まるで球体になってしまっているメンチ。どうしても我慢ができなくて買ってしまった。まだ昼飯も喰っていないのに。よく考えたら、昼飯を食べてから通れば良かったのである。まるで厨房の先に並べてみたという感じの店で、やっているのは若いふたりだ。
 その先には今度は練り物やさんがあって、その練り物には数えるのも大変だと思われるほどの種類がある。そしてその練り物やさんが店先でおでんを売っているという実に悩ましい光景なんである。これを大量に買っていったら、きっと顰蹙を買うだろうなぁと今回は我慢する。この路地にも洋品屋さんがあって、飾ってあるエプロンの上に「奥にも売るほどあります」とお約束の札が下がっているけれど、ここに書いてある文字が如何にも気の良さそうな奥さんの字のようで、思わず気が休まる。
 本通に戻って歩くと、昔ながらのお店とその中に今時風なフランチャイズ・チェーンの店が混ざっている。中でも驚くのは八百屋さんが何軒かあって、そのひとつひとつが実に充実している、ということだ。勢いがあって、品揃えが通りいっぺんではないのが羨ましい。スーパーがやってくるとその中の野菜や魚の品揃えというのは概ね決まり切ったものになってしまう。だから、最近のスーパーでは(大手を除く)魚屋だけ別の業者が入っているということがある。この商店街の魚屋もかなりな品揃えだ。魚鈴はどうやら評判の店のようで、ウェブ上でも随分触れている人がいる。
 おばあさんから若者まで、利用者の年代が限定されていないのが面白い古着屋で1500円の古着のコートを見ながら、この街に暮らすことに決めたら、それはそれで面白いんだろうなぁと想像を巡らしているうちにお腹が減って我慢ができなくなってきたので、そのきっかけとなった洋食屋を探しに行く。とにかく駅前に戻る。駅を出て左と聞いていた。あった、あったというのは小さな店で、「ランチハウス」と書いてある。名前の割には営業時間は午前11時半から午後11時までというロングランである。普通洋食屋でこんなに長時間営業しているところは聞いたことがない。学生が多くて、なおかつ勤め帰りの人が多いということか。
 メニューは一見さんにはなかなか理解しがたいものがあって、どうやらポーク焼き肉となにかの取り合わせというのが原則のようでもある。オリジナルだとかスペシャルだとか3種盛り合わせだとか、好きな具合に組み合わせて食べてね、という状態らしい。カウンターが7-8脚で奥にテーブルがひとつ。厨房は見えるだけで4人おられる。
 またいつものように良くメニューを点検もせずに、食べてみたいなと思っていた帆立フライを頼んでしまう。そのあとで、海老フライも良かったなぁと後悔する。
 見ているとポーク焼き肉を作るのに、バラ肉をちゃんと秤で量ってから調理している。目分量じゃないんだ!よくよくメニューを見ると餃子フライなんてものまで存在するのである。嬉しくなりそうな品揃えじゃないか。定食をお客が注文すると、お皿にレタスとキャベツの千切り、その上にスライスしたカプシカムを載っけて真ん中に配置する。ポーク焼き肉とメインを両側に置いて、若布と豆腐の味噌汁とご飯が定食になる。このご飯の量は私には多すぎた。次回は減らして貰おう。(もう次回があるつもりになっている)。
 実はどう考えても、このポーク焼き肉が私には余分だなぁと思ったのだけれど、これを一口食べて、うまい!と叫んだ、もちろん心の中でのことだけれど。実は食べログの口コミで誰かがタレが甘すぎると書いていたのだけれど、確かに味は濃いけれど、私には甘すぎるとは感じなかった。これなら、ポーク焼き肉だけでも良い。もし、20代にこの店に出逢っていたら、思いっきりご飯を頬張っただろう。それ位、ご飯も美味しい。ま、私がこの手の食いものに激甘な評者であることは知っておいて戴きたいけれど。それでもこれで700円は私は二つくらい星を上げちゃう。
 これで、夕飯はさっきの「あい菜家」のピーマンの肉詰めなんだから、爺さんの飯じゃないな。
 そうそう、twitterで十条銀座のことを呟いたら、なんと十条銀座商店街振興組合のtwitterがフォローしてくれた。こりゃ嬉しい。