近頃は平気で自分の妻のことを「奥さん」と表現する。他人の妻を敬って「奥におられる方」として表現するのに使うのが当たり前だった。「お宅の奥さん」と。
嬉しそうに「うちの奥さん」と表現する。そんなに畏怖の念に駆られているのかどうかは知らない。そういうのは何も知らないみたいで格好悪いぞと後輩にいったことがあるけれど、今ではテレビに出てくる輩まで平気で「うちの奥さん」を連発する。
私も平気でうちの妻のことを話題にすることが多いので顰蹙を買うのだけれど、そんな時には「うちのかあちゃんが」とか古ぶって「うちの妻(さい)が」とかいう。半世紀ほど昔は「うちの山の神が」というのが流行ったこともある。
「うちの奥さんが」というのを聴く度に、彼はうちに帰って三つ指ついて「参りました」といっているのを頭に描く。