ほぼ足りてまだ欲 その先

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再放送

 夜中にいつものように目が覚めて、テレビをつけたらNHKが「戦争孤児 前・後編」の再放送をしていた。この放送を前に見ていたことを忘れていた。麻布建物の渡辺喜太郎が出てきて、初めて、「あぁ、この放送は見たな」と気がついた。彼が戦争で孤児になっていたんだとは知らなかったと、当時、ここに書いた記憶がある。

 上野駅の地下通路も、銀座の晴海通りの地下道も、すっかり昔の佇まいを払拭してしまっているから、どんどん当時のことを世の中は忘れようとしている様に見える。積極的に忘れ去ろうとしている。思い出したくもないという力が世間を覆っている。しかし、為政者にとっては、こういう事実、過去を否定してなんのプラスになるのだろうという気にさせられる。忘れてはいけないことに限って為政者は捨て去ろうとしているように見える。このままにしておけば、彼等のことは彼等の人生の終焉とともに、忘れ去られていく。

 あの当時は確かにあれもこれも不足していて、挙げ句に外地から600万とも700万ともいわれる人たちが一気に帰国してきたわけだから、「手が回らない」という良いわけが通用したかも知れない。しかし、今になって、それがなかったことにされることが正当とされてはならない。国は積極的にそうした事例を保存し、当事者を探し出しても慰労していかなくては成らない。戦争を始めたのは東條英機をはじめとする、昭和天皇を含めた軍部かも知れないけれど、飽くまでも日本という国であって、今でも存在している国家そのものなのだ。
 確かに私たちは「戦災孤児」という言葉でかれらを悪者視して差別してきたんだから、それをなかったことにはできない。なぜか、戦争被害者を被害者として捉えることをしない風潮が流れていたことは事実だ。

 「戦争孤児たちの戦後史」というシリーズが吉川弘文館から刊行される。

戦争孤児たちの戦後史1: 総論編

戦争孤児たちの戦後史1: 総論編

  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: 単行本