ほぼ足りてまだ欲 その先

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アンゲラ・ドロテア・メルケル

 いわずと知れたドイツの前首相です。そういえば今の首相の名前を覚えていません。英国の今の首相も、そういえば覚えていません。とまぁこれくらいの受け取られ方なんでしょうね、日本の首相っていうのも。その点でいえば、安倍晋三は都合7-8年やったわけだから、日本の歴代の首相の中でも名前は知られたのかも知れないですね。でも、それって、安倍晋三本人だけの得意がりそうな話で、なんのメリットもありませんけれどね。

 安倍晋三のお友達(つまり月刊Hanada界隈の人たち)の間では彼を「外交の安倍」なんぞと称えることがあるらしいですね。ODAをぶん撒いていましたからね。あれは巡り巡って自分の懐に帰ってくるわけですが。
 しかし、メルケルさんのほんとうの意味での外交努力を知ると、なるほど、外交というのはこういうことなんだ、と改めて、ほんとうの意味での「政治」を知ることになりますね。2008年3月、彼女はイスラエルの国会議事堂で演説をした。イスラエルの議員の中には彼らを苦しめたドイツ語を聞くのは堪えられないと退出した議員がいたといいます。しかし彼女はその演説の冒頭にヘブライ語で語りかけたそうだ。

 メルケル東ドイツで育った。この事実だけでも驚く。東西ドイツが統一されたとき、もうほとんど東ドイツが破綻した結果、西ドイツに吸収されたようなもんだと思っていたから。しかし、彼女の家族は戦前から東側に暮らしていたわけではない。牧師だったメルケルの父親が共産主義というものは正しいと考えて西側から引っ越したのだそうだ。それなのに、統一されてから、あっという間に物理学研究者からCDU(ドイツキリスト教民主同盟)の人に転換できたことに驚く。そしてもっと驚くのは、どうしてあんなにフェアなものの考え方に徹することができるのか、ということでもある。政治を志す人達がすべて同時代に暮らす人々の少しでもより幸せを願って活動するのが当然だと考えたいと思うけれど、我が国でその考えを左手に握りしめて見回したら、思わず右の手も握りしめて拳にしてぶん殴りたいような気持ちになる、そんな連中ばかりだ。
 彼女のフェアネスに基づく考え方を知れば知るほど、なぜ彼女はわが国に生まれてくれなかったのかと、暗澹たる気持ちになる。